ビームライン光学技術推進室

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ビームライン光学技術推進室

ビームライン光学技術推進室の概要

 

 SPring-8の光源加速器で生成された高品質な(明るく,指向性の高い)光を,利用者の用途に合うように加工して,安全に提供するシステムをビームラインと呼びます.

 

 ビームラインは次のような特徴的な装置群から構成されます.

 最上流部はフロントエンドと呼ばれ,超高真空の光源加速器と接続され,キロワットに及ぶハイパワーの光を自在に受け止めます.中央部には,光のエネルギー(波長),大きさ,偏光などの光の特性を利用に応じて切り出す光学系と,結晶やミラーなどのX線光学素子を適切に冷却しながら,超高真空中で精密に姿勢制御する輸送チャンネルが配置されています.利用者に身近な実験装置や検出器はビームラインの終端部に位置します.

 

 フロントエンド,光学系,輸送系の装置群や,実験装置あるいは検出器の状態を記録しつつ遠隔操作・データ収録できるようにビームライン制御系が張り巡らされています.どんなに強力な光でも安全に利用できることは最も重要です.法令に則り放射線遮蔽ハッチやシャッタなど遮蔽装置群は堅牢に作り込まれ維持管理されています.

 

 ビームライン光学技術推進室は、数多くのビームラインを横断的に,SPring-8の高品質な光を自在に操るビームライン基幹部の維持管理,運営,高性能化を担っています.加速器部門とともに高輝度放射光の安定供給に責任を持ちながら,将来を見据えたビームライン光学技術の開発にも取り組んでいます.

 

 ビームライン光学技術は,X線光学を基軸に精密工学,真空工学,伝熱工学に加え,材料工学,電気電子・情報工学,物性化学など多岐にわたる科学技術分野の知見を積極的に活用する複合領域です.ビームライン光学技術推進室では,新しいアイデアに基づく機器の設計・考案に止まらず,ビーム調整や保守性も念頭において,ビームラインを横断的に俯瞰しつつ,先端的なビームライン光学技術の標準化と普及に努めています.

 

 ビームラインは先端的研究装置群ですが,工場のような規模と信頼性,導入・維持コストを考慮した一元的な設計・製作と維持管理が求められる点で,大学などの研究室における実験装置と一線を画します.このため,放射光分野に限らず,また産学官問わず,国内外のさまざまなグループや専門家と強く連携しながら,SPring-8の光が最先端で世界的にも高い競争力を発揮できるように努めています.

 

 ビームライン光学技術推進室は以下の2つのグループ(計4チーム)から構成され,26名の研究・技術スタッフ(兼務を含む)が所属しています.

 

光学基盤グループ(Optical Engineering Group)

 光学基盤グループは2つのチーム(輸送系チーム,放射線安全チーム)から構成され,ビームライン基幹部を構成するミラーやスリットなどの精密調整機構,X線窓,遮蔽ハッチ,ビームシャッタ,ビームラインインターロックなどの光学基盤を,高い信頼性・安定性をもって高性能かつ安全な光として利用者に提供するために一元的に維持管理するとともに次世代光源に向けて新たなビームライン光学基盤の設計・評価を行い高性能化を進めます.

 輸送系チーム(Precision Mechanics and Vacuum Team)

放射光を利用者に輸送するためにビームライン全体を俯瞰して,放射線環境下における超高真空対応の光学基盤の維持管理・高度化を担います.例えば,精密な角度・位置調整機構を備えた集光装置やスリット,あるいはX線窓などの設計・調整を行い,利用者に高性能で安定な放射光を届けます.このために,他のチームと連携してビームライン全体のシミュレーションや有限要素法などによる解析や機構設計や新たな評価手法の開拓を行います.

 放射線安全チーム(Radiation Safety Design and Component Team)

法令に則り,放射線遮蔽機器の維持管理・高度化ならびに遮蔽計算業務を担います.例えば,放射線遮蔽ハッチやビームシャッタなどの遮蔽基盤を構築し,またビームラインインターロックシステムの設計・運用を通じて,利用者に安全な放射光を届けます.このために,他のチームと連携してモンテカルロシミュレーション等による放射線遮蔽計算あるいは放射線機器保護のための新たな手法の開拓を行います.

 

光学機器グループ(Optical Device Group)

 光学機器グループは2つのチーム(光学チーム,高熱負荷チーム)から構成され,ビームライン基幹部を構成する結晶,ミラー,多層膜,液体窒素冷却系,アブソーバ,高熱負荷スリットなどの光学機器を,高い信頼性・安定性をもって高性能かつ安全な光として利用者に提供するために一元的に維持管理するとともに,次世代光源に向けて新たなビームライン光学機器の設計・評価を行い高性能化を進めます.

 光学系チーム(Optical Design and Diagnostics Team)

X線の分光,偏光など放射光の特性を利用に応じて自在に切り出すX線光学機器の維持管理・高度化業務を担います.例えば,二結晶あるいは多層膜分光器によるX線ビームイメージ,強度,波面を精密に計測し,高品質放射光の安定供給を目指しています.このために,他のチームと連携し光学系全体のシミュレーションや光学素子の設計や計測あるいは評価手法の開拓を行っています.

 高熱負荷チーム(Thermal Management Team)

放射線環境下における超高真空対応の高熱負荷機器の維持管理・高度化業務を担います.例えば,フロントエンドスリットやアブソーバあるいは液体窒素冷却の第一光学素子などの高熱負荷機器の設計・調整や,液体窒素冷却システムの設計・運用を行い,所望のX線ビームの安定供給を目指します.このために,他のチームと連携して有限要素法などによる高効率の冷却手法開拓を行います.


室長 大橋治彦

当室の業務に関係する参考書
http://www.jssrr.jp/picture/beamlinebook.pdf

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