車載用リチウムイオン電池のコンプトンイメージング No.34

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車載用リチウムイオン電池のコンプトンイメージング No.34

車載用リチウムイオン電池のコンプトンイメージング

成果のポイント

  • コンプトン散乱*イメージングおよびX線吸収イメージングにより、リチウムイオン電池の充放電時における物質移動を非破壊で捉えることに成功
  • 電池を厚み方向に対して垂直に断面をイメージングすると、電池の中心部分と表面部分でコンプトン散乱分布の傾向が逆転し、電池内部の反応が場所により異なることを発見
  • コンプトン散乱強度を与える物質が電解液あるいは電解質とすると、電池表面側に電解質由来の物質が集中し、逆に中心部分では物質濃度が減少することを確認
  • 電池設計仕様や車両制御設定の構築に活用でき、バッテリの更なる高機能化に貢献することが期待

研究・開発機関(株)本田技術研究所 / 群馬大学

*コンプトン散乱:X線を物体に照射したとき、散乱X線の波長が入射X線の波長より長くなる現象。
**オペランド(計測):触媒の分野などで、その触媒が機能している状態での計測。

SPring-8の活用

背景
車載用電池の劣化には、構成要素のセル内部における空間的な不均一性が大きく関与しています。非破壊X線回折により正負極活物質の状態分布は解析可能ですが、もう一つの重要な構成要素である電解液は回折により情報を得ることが困難であり、そのセル内分布には不明な点が多いです。コンプトン散乱は透過力の強い高エネルギーX線を使うことから実セルの非破壊解析に適しており、元素組成を解明できる可能性も持っています。本研究では実セル内の電解液分布を明らかにすることを目的とし、コンプトン散乱とX線吸収強度によるオペランド**イメージング測定を行いました。

成果の詳細
試料は車載用リチウムイオン電池で実施しました。試料をXYZステージ上に設置し充放電装置と結線し充放電しながらオペランド測定を行い、入射光強度と透過光強度をイオンチャンバーにより測定し吸光度を求めました。散乱光は直径1 mmのコリメーターを通してGe半導体検出器により測定し、散乱光のエネルギー分析によりコンプトン散乱強度を求めました。
測定時の表面近傍と中心のコンプトン散乱強度の変化パターンが対称的であり、散乱をもたらす実体が表面と中心の間を移動していることを示唆しています。

試験内容

試験内容

車載用リチウムイオン電池のX線の吸収強度および散乱角135°時のコンプトン散乱強度を、充放電時に動く物質の偏りを非破壊で検証した。

X線吸収、コンプトン散乱の比較結果

X線吸収、コンプトン散乱の比較結果

定格容量での充放電における物質の偏り(a 電池表面側 b 電池の中心側)はコンプトン散乱強度のみ、満充電状態で分布の傾向が逆転し、電池内部の反応が場所により異なる。

面内分布イメージングの傾向と考察

面内分布イメージングの傾向と考察

面内方向でも表面側と中心側でコンプトン散乱が強い部分と弱い部分が発生している。
⇒表面側では電解液と電解質が集中しているが、中心側では面内で物質濃度が減少していると推定できる。

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