超高引き裂き強度シリコーンゴムを開発 JIO-027

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超高引き裂き強度シリコーンゴムを開発 JIO-027

超高引き裂き強度シリコーンゴムを開発

ナノシリカフィラー凝集体の挙動を解明

成果のポイント

  • シリコーンゴム*の延伸に伴うシリカフィラー凝集体の階層構造の変化を解明
  • シリコーンゴムの硬度、引き裂き強度、延伸度の独立制御が大幅に改善
  • 透明度を維持した、引き裂き強度の高いシリコーンゴムを開発

研究・開発機関:住友ベークライト(株)

*シリコーンゴム ケイ素を主体とし、ケイ素と酸素が交互に結び付いたシロキサン結合(SiO)からなるゴムで、耐熱性、耐寒性などの様々な特性を持っています。シリコーンゴムは医療用材料として幅広く用いられており、透明性が高く、ある程度の硬度を保ちながら、特に引き裂き強度の高い材料開発が望まれています。
**小角X線散乱測定(SAXS) X線を試料に照射し、散乱強度のプロファイルからナノスケールの構造を解析する手法です。
***極小角X線散乱測定(USAXS) 従来のX線小角散乱で測定される一般的なサイズは数~数10 nmですが、それよりも大きい数百nm程度のサイズのメゾスコピック構造を、より極小散乱角領域の散乱強度プロファイルを測定し評価する手法を極小角X線散乱測定と呼びます。

 

SPring-8の活用

背景
医療の発展に伴い、より高性能な医療機器の開発が求められています。医療材料の中でもシリコーンゴムは、耐熱・耐寒性、化学的安定性、電気絶縁性、気体透過性、透明性、離型性などに優れていますが、引き裂き強度や引張強度が他のゴム材料よりも劣っているため利用範囲が限られていました。
 そのなかで透明で機械的強度の高いシリコーンゴムの開発が求められたことから、シリコーンゴムの内部に補強材としてシリカフィラーを分散し、周囲のゴムとのつながりを強めることで機械的強度の改善を図りました。しかし一方で、科学的にも延伸時のフィラー凝集構造の変化と引き裂き強度との関係を解明する必要がありました。

成果の詳細
小角X線散乱測定**による凝集構造を含めたフィラーの分散状態の観察には、極小角X線散乱測定***が可能で、評価できる構造のサイズレンジが広いSPring-8が適しています。そこで、シリカフィラーを分散した強度の異なるシリコーンゴムを引張試験機で延伸しながら、SPring-8で小角X線散乱測定を行い、ナノシリカ凝集体の階層構造とその変化挙動をその場観察しました。
 その結果、フィラーとマトリックスの界面の結合が強固なシリコーンゴムを延伸すると、フィラーも延伸方向に引っ張られ、その結果引き裂き強度が強くなることがわかりました。また、界面の強度はフィラーの凝集状態に依存することが明らかになり、これらの制御によりシリコーンゴムの材料特性の改善に繋がりました。

産業利用Iビームライン(BL19B2)における超高速引張試験と小角X線散乱測定

BL19B2における超高速引張試験と小角X線散乱測定

シリコーンゴムは引っ張ると同時に緩和が始まるため、最大速度1 m/sの延伸機を設置し、ゴムを延伸させながら、内部のフィラーの凝集状態を観察しました。


SAXS測定で得られた二次元画像

ナノシリカフィラーを充填したシリコーンゴムのUSAXS、SAXS測定で得られた二次元画像。

ナノシリカフィラーを充填したシリコーンゴムの延伸に平行な方向の強度プロファイル

ナノシリカフィラーを充填したシリコーンゴム(フィラー含有量34.1 wt%)の延伸に平行な方向の強度プロファイル(λは延伸倍率を表す)。
延伸初期から配向を示す特徴的なパターンが観察され、シリコーンゴムが延伸されると、延伸方向に伸張されるフィラーの凝集状態を捉えることができました。

引き裂き強度の違いによる応力と密度揺らぎの不均一性の違い

密度揺らぎの不均一性

フィラーとマトリックス界面が強固に結合されていれば、引き裂き強度も強くなることがわかりました

開発した高引き裂き強度を有するシリコーンゴム

開発した高引き裂き強度を有するシリコーンゴム

延伸によるシリカフィラーの凝集状態の変化の観察を経て、フィラー表面を処理し、フィラーとシリコーンの界面強度の改善等を図りました。その結果、30~70という広い硬度範囲で、通常の約5倍(50 N/mm)の引き裂き強度を有するシリコーンゴムの開発に成功しました。(製品名 デュラック® DuraQ®)この超高引き裂き強度シリコーンゴムは、医療機器分野のみならず、自動車や航空機の機械部品、衣料品、ヘルスケア、ウェアラブル関連商品などの用途としても期待されています。

医療用シリコーン利用製品例

医療用シリコーン利用製品例

手術後における創部の血液、膿、滲出液などの持続吸引器