放射光を用いた毛髪内部Intermediate Filament構造変化の解析 ~アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウムの毛髪うねり改善メカニズムの解明~ No.056
放射光を用いた毛髪内部Intermediate Filament構造変化の解析
~アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウムの毛髪うねり改善メカニズムの解明~
成果のポイント
- アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウムが毛髪うねりを改善するメカニズムの一つを解明
- 小角X線散乱法により毛髪内部のIntermediate Filament構造変化をミクロレベルで解析
- 加齢による毛髪のうねりに悩む女性に向けた製品へ応用
研究・開発機関:ロート製薬株式会社、神戸大学
SPring-8の活用
背景
これまでのクセ毛悩みに関する女性の意識調査*で、くせ毛に悩む女性の多くが年齢を重ねるにつれて髪質の変化やうねりを感じていることがわかりました。毛髪は下図の「イメージ」に示すように多層の組織から成り、うねりは組織のゆがみで生じることが知られています。
一方で毛髪組織の詳細な内部構造の解析に基づいた毛髪に作用する成分の作用メカニズムについての知見は少なく、近年開発された成分でうねり改善効果があるとされる「アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム」※1(以下ATS)についても効果を裏付ける作用メカニズムや浸透の状態は明らかにされていませんでした。
*クセ毛悩みのある40代女性への調査、髪質の変化が気になる方85%、年齢を重ねてうねりが強くなったと感じる方71%(n=172、ロート製薬調べ)
結果
ATSの毛髪うねり改善メカニズムの解析
ATSが毛髪内部のIntermediate Filament※2(IF)に及ぼす影響をミクロレベルで解明するためにSPring-8にて毛髪の解析を行い、ATS塗布前後の毛髪内構造変化を評価しました。くせ毛の評価として、カールの強い縮れ毛を用いて毛髪のうねり改善評価を行いました。未処理の縮れ毛とATSに浸漬した縮れ毛についてBL40XUを用いて小角X線散乱解析を行い、図1-1および1-2の左側に示したX線散乱パターンよりIFの乱れ幅を求めました。未処理毛ではIFの乱れ幅が大きく(図1-1)、ATS処理毛ではIFの乱れ幅が小さいことがわかりました(図1-2)。乱れ幅がねじれの程度を反映しているため、未処理ではIFのねじれが強く、処理したものについてはIFのねじれが小さくなっていることがわかりました。
イメージングマスによる毛髪内部へのATSの浸透確認
X線構造解析により、ATSが毛髪内のIFに作用していることがわかりました。そこで、ATSが毛髪内部のどこまで作用しているかを確認するため、当社にて浸透試験を行いました。ブリーチ毛にATSを浸漬させ、イメージングマス※3で計測しました。その結果、浸漬させたものは毛髪内部までATSが浸透していることがわかりました(図2)。
ATSを含むヘアケア製剤によるうねり改善効果の確認
ATSを配合したヘアケア製剤を作製し、縮れ毛へ塗布、ドライヤーブローを行ったところ、同箇所のうねり改善が見られました(図3)。
うねりに悩む方のためのヘアケア製品開発
本研究成果により、ATSが毛髪内部のIFのねじれを整えることにより、毛髪のうねりを改善するということを解明しました。この発見は、当社が毛髪の加齢による不可逆な変化を解決するための第一歩となり、今後のヘアケア商品の開発へつながることが期待されます。今後も毛髪構造を理解し、悩みの原因を探り、最適なアプローチ方法を探求していくことで、ヘアケア領域における新しい試みに挑戦してまいります。
用語説明
※1 アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム: Di-ammonium Amino-ethyl-Thio-Succinate
毛髪のねじれ・うねりの補正効果が期待されている、近年開発された新たなヘアコンディショニング成分。
※2 Intermediate Filament (IF)
コルテックス細胞を形成するケラチン繊維のこと。髪の弾力や形状に関与すると知られている重要な部分。
※3 イメージングマス:質量分析イメージング
光学顕微鏡で観察した画像に基づき観察領域を設定し,その領域内にレーザー光スポットを照射して励起脱離したイオンを質量分析するもの。
【関連情報】
- 関連ビームライン:BL40XU
- 掲載日:2024年9月19日





