長寿命の次世代リチウムイオン電池の開発 No.011

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長寿命の次世代リチウムイオン電池の開発 No.011

長寿命の次世代リチウムイオン電池の開発

性能劣化の原因を解明

成果のポイント

  • 次世代のリチウムイオン電池*として開発中のニッケル型電池の
  • 充放電過程を調べ、性能劣化の原因を原子レベルで解明
  • 正電極の組成を改良して劣化層の成長を抑制し、電池寿命を向上
  • 電池の軽量化とコスト削減が期待でき、ハイブリッド車や電気自動車への応用に道

研究・開発機関:(株)豊田中央研究所

SPring-8の活用

背景
 実用化されているリチウムイオン電池は正極材料としてコバルトを使っています。コバルトは世界中で埋蔵量が少なく高価であるため、電池のコストも高くなっています。そこで、埋蔵量が豊富で安価な材料を用いた次世代電池が求められています。
 コバルトに代わる新たな正極材料としてニッケル酸化物を主成分とする材料が近年注目を浴びています。しかし充放電をくりかえすと、正極粒子の構造が変化したり、性能の劣化が早まるといった問題が出ています。その原因の解明が待たれていました。

成果の詳細
 SPring-8 の高輝度X線を使うと、正極粒子の状態を直接観察することができます。充放電をくりかえした電池を観察したところ、正極粒子の表面にリチウムイオンを通しにくい劣化層が成長していたり、リチウムイオンの通り道を2価のニッケルイオンがふさいでいることが明らかになりました。
 そこで、電極の組成をいろいろに変えて観察を重ね、劣化層の成長を抑えられる組成を見つけることができました。こうして電池寿命の向上に成功しました。


リチウムイオン電池の原理

電池リチウムイオン電池は、正極、負極、電解質、セパレーターなどから構成されています。電池性能を左右するのは正極材料で、現在はコバルト酸リチウム(LiCoO2)が広く使われています。負極には黒鉛(C)、電解質にはリチウム塩が用いられ、充電のときには、正極からリチウムイオンが電解質の中に溶け出し、負極の黒鉛の間に入りこみます。放電では、この逆の反応が起こります。

リチウムイオン電池の原理

電池性能が劣化する仕組み

1)劣化層の成長
実際の正極粒子は、多数の単結晶粒子(一次粒子)が集合した直径数マイクロメートルの粒子(二次粒子)で、電解質に囲まれています。
充放電をくりかえすと、この二次粒子の表面がリチウムイオンを通しにくい状態に変化します。

 

2)リチオウムイオンの通路がふさがれる
原子レベルで見た結果、充放電をくりかえすと、一部のリチウムイオが2価のニッケルイオンに置き換わり、リチウムイオンの通り道が阻害されていることがわかりました。



用語解説

*リチウムイオン電池 リチウムイオン電池は充電して再使用できる二次電池の一種。ニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池に比べて軽量で大容量であることから、携帯電子機器における使用量が急増しています。ハイブリッド車や電気自動車でも長寿命な二次電池が求められており、リチウムイオン電池の高性能化へ向けた開発競争が世界規模で展開されています。


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  • 掲載日:2019年12月4日

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