ポリマーセメント系塗膜防水材の材料設計法を確立- No.007

Japanese | English

ポリマーセメント系塗膜防水材の材料設計法を確立- No.007

ポリマーセメント系塗膜防水材の材料設計法を確立

水和反応と硬化過程を追跡

成果のポイント

  • ポリマーセメント系塗膜防水材*のセメント水和反応を経時観測し、セメント水和物が生成される過程を解明
  • 施工環境の温度や湿度に応じた精密な材料設計を可能とし、製品の信頼性を向上
  • 製品の性能と信頼性が高まり、国内外の重要施設で採用(採用例:六本木ヒルズ、上海環球金融中心、東京都都市計画練馬トンネルなど)

研究・開発機関:大関化学工業(株)

SPring-8の活用

背景
 ポリマーセメント系塗膜防水材は高温、高湿度などさまざまな条件下で使用されますから、使用環境に応じた材料特性が求められます。それぞれの目的に適った材料を得るには、セメント水和反応の過程を詳しく知り、施工仕上がりを予測できるような材料設計が必須です。
 しかし、水和反応の過程を調べるには分子レベルの詳細な測定が必要です。そのため、汎用のX 線装置では測定することができませんでした。

成果の詳細
 SPring-8 の高輝度X 線回折法により、ポリマーセメント中の水和反応の全過程を追跡し、複数のセメント水和物がいつどのようにして生成されるかを調べました。また、セメント、ポリマーエマルションの配合比率が同じ材料を使って温度や湿度を変えたデータをとり、反応速度の変化などの挙動を定量的に明らかにしました。
 これらの結果から、湿度100%の地下閉塞環境でも、ポリマーエマルション中の水分をセメント水和反応に有効に利用し、防水塗膜を形成する材料設計が可能になったのです。


ポリマーセメント系塗膜防水材の塗膜形成

ポリマーセメント系塗膜防水材の塗膜形成

SPring-8で測定したセメント水和反応の進行(室温)

SPring-8で測定したセメント水和反応の進行(室温)

室温と35℃での水和反応過程の比較

室温と35℃での水和反応過程の比較

35℃のほうが、早く水和物の生成が起こっています。この結果から、温 度が高くなると、反応が促進されるという挙動が明らかになりました。



用語解説

*ポリマーセメント系塗膜防水材
建築・土木に用いられる防水材の1つで、ポリマーエマルションとセメント系粉体を現場で混錬し、躯体に塗布し、セメントの水和反応とともに防水塗膜を形成します。ポリマーの柔軟性とセメントの強靭性、接着性を 併せ持ち、かつ有機溶剤や火気を使用しないことから、安心・安全な防水材として広く使用されています。


【関連情報】

PAGE TOP