髪にツヤを与えるヘアケア製品の開発 No.004

Japanese | English

髪にツヤを与えるヘアケア製品の開発 No.004

髪にツヤを与えるヘアケア製品の開発

髪のツヤを細胞レベルで定量化

成果のポイント

  • 髪のツヤに関係するうねりを細胞レベルで定量的に評価
  • うねりを緩和しツヤを与える効果のある有機酸を配合したシャンプー、コンディショナー、トリートメントを製品化

研究・開発機関:花王(株)

SPring-8の活用

背景
 髪にツヤがないという女性の悩みは、年齢とともに増えていますが、ツヤがなくなる原因ははっきりしていませんでした。そこで、まずツヤの程度を数値化して計測し、加齢に伴ってツヤが低下することを明確にしました。また、ツヤの低下にはうねりの増加が関係していることもわかってきました。
 さらに、毛髪の内部にあるコルテックス細胞*を染色して調べたところ、うねりのある毛髪では2種類の細胞分布に偏りがみられました。

成果の詳細
 コルテックス細胞分布の偏りとうねりの関係を詳しく知るには、内部繊維がねじれて並ぶ細胞がどのように配列されているかを調べる必要があります。ところが、毛髪の直径はおよそ100 マイクロメートル(1μmは1000 分の1 mm)。毛髪の微小部分の構造を解析するには、5 μmの分解能で高精度に解析できるSPring-8 の高性能X線が必要です。
 小角散乱法**で得られた画像を解析した結果、毛髪のうねりの強さは2種類のコルテックス細胞の分布の偏りの大きさと関連していることが、定量的に明らかにされました。


加齢に伴う毛髪の変化

加齢とともにうねりが増し、それに伴ってツヤが低下します。染色した毛髪断面を見ると、うねりのある毛髪では、内部の2種類の細胞(赤と緑)が偏って分布していることがわかります。

Pt/CZを含む三元触媒の働き


うねりのある毛髪内の細胞分布

内部繊維が並行して並ぶ細胞(緑の部分)と、内部繊維がねじれて並ぶ細胞(赤の部分)が偏って分布しています。

うねりのある毛髪内の細胞分布

小角散乱法で得られた画像

中心の円形の部分はビームストップの影。左右に見られる黒い部分が毛髪内部繊維の配列を反映する散乱パターンで、直毛では内側と外側であまり差がありませんが、うねりがあると異なるパターンになります。

小角散乱法で得られた画像

 


用語解説

*コルテックス細胞
毛髪は3つの組織からなり、中心にあるメデュラのまわりをコルテックスが囲み、その外側をキューティクル層がおおっています。毛髪の約90%はコルテックスで占められ、縦方向に並ぶその細胞には内部繊維が並行に並ぶ細胞と、内部繊維がねじれて並ぶ細胞の2種類があります。直毛では、内部繊維がねじれて並ぶ細胞のまわりを、内部繊維が並行して並ぶ細胞が同心円状に取り囲んでいますが、うねりのある毛髪では2種類の細胞の分布が偏っています。

**小角散乱法
X線ビームをマイクロレベルに絞って物質に照射し、散乱強度のプロファイルから物質の構造を解析します。コルテックス細胞の測定では、内部繊維の傾き角を反映したデータを得ることができました。


【関連情報】

PAGE TOP