世界で初めての技術の成功。~ハードディスクの大容量化へ~ No.038

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世界で初めての技術の成功。~ハードディスクの大容量化へ~ No.038

ハードディスク用書き込みヘッドの新たな解析技術を開発

世界で初めての技術の成功。~ハードディスクの大容量化へ~

成果のポイント

  • ハードディスクドライブ(HDD)用書き込みヘッドの磁化反転が1ナノ*秒(10億分の1秒)以内に完了する様子を詳細に可視化することに成功
  • 次世代書き込みヘッドの開発が加速し、HDDのさらなる大容量化が期待

研究・開発機関:(株)東芝・高輝度光科学研究センター・東北大学

SPring-8の活用

背景
 世界はインターネットなどを介しての情報化が益々進んでいます。世の中の扱われるデータ量は2018年から2025年のわずか7年間で5倍以上になると予測され、世界は「データ爆発の時代」を迎えています(参考1)。それら情報を記録する媒体の一つがHDDです。HDDは磁性を得た円盤上に書き込みヘッドを介し情報を書き込むもので、身近なパソコンを含め多くの媒体で使用されています。
 今後、HDDのさらなる容量の増加と、データ転送速度の向上を実現するためには、書き込みヘッドの動作を正確に把握して合理的な設計にする必要があります。しかし、書き込みヘッドは100ナノメートル以下の微細な構造をもち、1ナノ秒以内で高速な磁化反転が行われるため、実際にその動作を観察することはこれまで困難でした。それら動作の把握は、磁化挙動シミュレーションによる解析や、磁気記録媒体に書き込みを行った際の特性を用いた間接的な解析によって推測する手段しかなく、ヘッドの動作を正確に把握できる新しい手法の開発が望まれていました。

成果の詳細
 大型放射光施設SPring-8のビームラインBL25SUに設置された走査型軟X線磁気円二色性顕微鏡**を用いたHDD書き込みヘッドの新規解析技術を開発しました。これにより、集光したX線を書き込みヘッドの記録媒体対向面上で走査し、磁気円二色性を利用することで磁化の時間変化の画像化に成功しました。その結果、50ピコ*秒の時間分解能(理論分解能)、100ナノメートルの空間分解能で、書き込みヘッドの微細な構造、高速な動作の解析を可能にしました。今後、X線の集光に用いる素子の改良などを重ねることで、さらに高い分解能を達成するポテンシャルがあります。
 この手法を用いて、書き込みヘッドの反転時の磁化変化の解析を行い、主磁極部分の磁化反転が1ナノ秒以内に完了する様子をとらえました。また、主磁極部分の磁化反転に伴ってシールド部分に生じる磁化の空間的パターンの観察にも成功しました。動作時の書き込みヘッドの磁化の挙動をこのような高い空間・時間分解能でとらえた研究はこれまでなく、本手法を用いることで、書き込みヘッドの動作解析を高精度に行うことができ、HDDのさらなる高性能化を可能とする次世代書き込みヘッド開発への貢献が期待できます。

ハードディスクドライブ

ハードディスクドライブ

 
 
 
 磁性を持つ円盤状のハードディスクを回転させ、書き込みヘッドで情報の書き込み・消去を行う。

ハードディスクの新規解析技術

ハードディスクの新規解析技術

 SPring-8の蓄積リングから周期的に生成されるX線パルスに同期させ、その10分の1の周期で書き込みヘッドの磁化を反転させるタイミング制御を行い、時間分解測定を実現した。X線パルスに対しHDD駆動電流の位相を50ピコ秒レベルで理論上測定可能となった。SPring-8の走査型軟X線磁気円二色性顕微鏡は、文部科学省の元素戦略プロジェクト(研究拠点形成型)<磁性材料研究拠点>で開発された。

書き込みヘッド磁化変化の様子

ハードディスクの新規解析技術

磁化反転にともない、磁化の変化してゆく様子が数十ピコ秒レベルで観察された。
0.78 ナノ秒 から1.58 ナノ秒 の約1ナノ秒の間に主磁極部分の磁化反転が完了している。

用語解説

*ナノ・ピコ
ピコは「1兆分の1(0.000 000 000 001)」ナノは「10憶分の1(0.000 000 001)」

**走査型軟X線磁気円二色性顕微鏡
X線磁気円二色性とは、磁性体の円偏光X線の吸収係数が左・右円偏光で異なる現象。走査型軟X線磁気円二色性顕微鏡では、軟X線を集光し、試料を二次元的に移動させて(走査)、左・右円偏光による吸収の差を測定する。そのため、非常に高感度でかつナノスケールの磁化情報を得ることが可能。

参考1:日本HDD協会2020年1月セミナーレポート

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