冷凍食品中の微細な氷結晶の状態をCTで観察 No.032

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冷凍食品中の微細な氷結晶の状態をCTで観察 No.032

冷凍食品中の微細な氷結晶の状態をCTで観察

食材の食感を壊さない冷凍技術の定量評価

成果のポイント

  • 「 過冷却*」現象を応用した「瞬冷凍」機能を持つ家庭用冷蔵庫で凍らせた食材中の、微細な氷結晶の観察に高輝度X線CTを用いて成功
  • 従来は解凍後の評価が中心であった冷凍食品について、高輝度X線を用いた凍結したままでの定量的評価手法を開発
  • 食材の冷凍方法の違いによる、氷結晶の成長の影響について確認

研究・開発機関:三菱電機(株)

*過冷却 水などの物質が凝固(凍る)温度以下でも、液体のままで存在する不安定な状態を指します。水の場合だと0 ℃以下でも液体の状態です。
**サンビーム 企業グループ13社による“産業用専用ビームライン建設利用共同体(サンビーム共同体)”が運営するSPring-8の専用ビームライン。BL16XU(挿入光源(ID)ビームライン)とBL16B2(偏向電磁石(BM)ビームライン)の2本のビームラインがあります。

SPring-8の活用

背景
肉や魚、野菜などの食品を冷凍して解凍すると、「ドリップ」と呼ばれる水分が出て食味が損なわれます。それは食材中の氷結晶が成長して大きくなり、細胞組織が破壊されることが原因です。そこで開発されたのが「過冷却」現象を応用した冷凍技術「瞬冷凍」です。「瞬冷凍」で処理された食材は氷結晶サイズが小さく、ドリップ低減、食感維持に顕著な効果があることが認められました。一方で食材中の氷結晶の大きさを定量的に測る方法は、今まで染色や凍結乾燥した食材の切片を観察する間接的な手法が主流であり、食品全体の氷結晶の状態を直接非破壊で確認できる手法が求められていました。

成果の詳細
食材を破壊せずに内部の状態を確認する手法としてはX線CTが有効です。しかし幅広いエネルギーのX線を用いる通常のX線CT装置では、氷とタンパク質といったX線線吸収係数の違いが小さい物質の区別は困難でした。そこで、SPring-8の高輝度で単色のX線を用いることにより、食品と氷結晶の様な通常のX線CTでは区別が難しい試料でも、内部の詳細な撮影が可能になりました。実験では試料冷凍系の整っている産業利用ⅠビームラインBL19B2で先行実験ののち、サンビーム**BL16B2での冷凍撮像系を確立させました。これらを用いて、牛肉、マグロ、じゃがいもをそれぞれ「瞬冷凍」「通常冷凍」したものを180度連続回転させながら、断層画像を数百枚撮影して、断面の氷結晶を比較しました。その結果、いずれの食材も「瞬冷凍」のほうが凍結前に近い状態が保たれることがわかりました。

過冷却現象を利用した凍結の原理

水が凍るためには「氷核」と呼ばれる、凍結のきっかけとなる「タネ」が作られる必要があります。一度氷核ができると、それを中心に氷の結晶は成長して大きくなっていきます。これは逆にいえば、水が一般に凍る温度である0 ℃以下の状態(過冷却)になっても、氷核が作られなければ凍らないことを意味しています。過冷却状態の水は、温度や衝撃等のちょっとしたゆらぎを与えられることで一気に氷核が生まれ、全体で凍結が始まり進行します。その際にできる氷結晶は一般的な方法で水を凍らせた場合よりも、微小であることが知られています。

過冷却現象を利用した凍結の原理

BL19B2でのCT撮影

通常冷凍(左側)と瞬冷凍(右側)の牛肉(上段)と茹でジャガイモ(下段)を比較しました。明るいコントラスト領域がタンパク質などの食物繊維で、暗いコントラストが氷結晶です。瞬冷凍の方が、全体的に氷結晶が分散していることが確認されました。このことから氷結晶が小さいほうが冷凍食品の組織構造への影響が少ないことが証明されました。

BL19B2でのCT撮影

BL16B2での冷凍撮像系の構築

BL16B2での冷凍撮像系の構築

(a)冷却ステージ

(a)冷却ステージ

(b)試料カバー設置時

(b)試料カバー設置時

実験ハッチ内に設置された回転試料ステージに、凍結した食品を入れたホルダーを置き、X線CTにより三次元撮影を行いました。撮影時に試料中の氷が溶解したり、霜が付着しないようにするため、ホルダー上部のカバーには低温窒素ガスを吹きつける治具をセットしました。それにより試料を約-30 ℃に保った状態で、ステージを毎秒2.2度ずつ180度回転させながら、250 msで連続画像を取得することが可能になりました。

BL16B2でのCT撮像の結果

(a)冷却ステージ

冷凍牛肉を撮影の結果、観察時の溶融や霜が少ない状態で明瞭に撮影できることが分かりました。

「瞬冷凍」機能を搭載した冷蔵庫

「瞬冷凍」機能を搭載した冷蔵庫

2007年から発売が開始され、現在も改良を続けながらシリーズを展開しています。

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