凍り豆腐のイメージング観察 No.025

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凍り豆腐のイメージング観察 No.025

凍り豆腐のイメージング観察   Web限定公開 

物性・食感の変化を観察

凍り豆腐(または高野豆腐)は、豆腐を凍らせ熟成してから乾燥させたもので、伝統的には冬の寒気を利用して作られますが、現在市場に多く出回る製品は冷凍機・乾燥機を利用して作られます。

成果のポイント

  • 凍り豆腐(高野豆腐)の製造過程をSPring-8で初めて確認
  • 氷温下での低温熟成では氷の融解と再成長による脱水が生じ、豆腐中のタンパク質の疎水的な結合を促していることが判明

研究・開発機関:日本大学・旭松食品(株)

*SDS-PAGE法 ポリアクリルアミド電気泳動法の略。タンパク質分析法のひとつで、タンパク質の分子量の差を利用して分離する方法です。

SPring-8の活用

背景
 “凍り豆腐”とは、“高野豆腐”とも言われ、冷凍技術を利用した、豆腐から製造される特徴的な食感を持つ古くから知られている加工食品の一つです。製造方法は、大豆から豆腐を作り、その豆腐を凍結させ、約3週間低温(-2 ℃)で保存し、タンパク質を変性させた後、解凍・脱水を経てスポンジ状の状態となり、製品化されます。この凍り豆腐の特徴的な食感を得るためには、経験的に3週間の低温での保存が必要とされていますが、製品としての生産効率を上げるためには、“保存期間”を短くする必要があります。
 タンパク質の変性と“スポンジ状”への形成は、低温での保存期間中において氷の結晶が関与し、タンパク質間相互作用の変化と結晶の成長における組織変化が原因であると言われていますが、これらの時間的依存性は明らかではありませんでした 。

成果の詳細
 そこで、凍り豆腐の製造過程における組織の変化を確認するため、SPring-8の高輝度放射光によるX線CT測定と、SDS-PAGE法*や水分吸着等温線測定を用いたタンパク質の分析を行いました。
 まず放射光X線CTの結果から、凍り豆腐中の組織が低温貯蔵の初期段階(0~7日)で氷の融解と再凍結が起こす豆腐組織からの脱水過程に起因すると思われる密度分布の変化を起こしていること、また7日目から14日目にかけて氷の結晶が成長し、組織がより粗なスポンジ状になることが分かりました。この結果とSDS-PAGE法、水分吸着等温線測定の測定結果を合わせて検討した結果、この組織変化がタンパク質の親水性領域と疎水性領域のバランスの変化を起こし、材質中の水-タンパク質の相互作用からタンパク質-タンパク質の相互作用への変化を誘発することが、全体の食感の変化の要因であることが推察されました。これらの知見は、凍り豆腐における生産性の向上に貢献することが期待されます。

 

“凍り豆腐”の製造過程

凍り豆腐の製造過程

BL19B2のCTにおける“その場”観察

BL19B2のCTにおける“その場”観察

使用したSPring-8の産業利用Iビームライン(BL19B2)のX線CT装置と冷凍試料用液体窒素吹付冷却装置

SPring-8でのX線イメージング像

SPring-8でのX線イメージング像

CTによる豆腐の凍結状態の時間経過

CTによる豆腐の凍結状態の時間経過(0日、7日、14日:スケールは2 mm)(上)と、X線線吸収係数の頻度分布(下左:全体図、下右:拡大図)。保存0日目から7日目までは氷の結晶(上図のグレーの部分)の形状変化ははっきりと見られなかったが、X線線吸収係数の空間分布に反映される凍結組織中の空間分布が変化していることから、タンパク質が主構成成分である豆腐の骨格から、脱水が生じていることが推察される。

CT像より再構成された凍り豆腐骨格の3D像

CT像より再構成された凍り豆腐骨格の3D像(0日、7日、14日: 2 mm x 2 mm x 0.45 mmの再構成像)。氷の結晶が焼結することにより、小さな気孔の一部が消失し、大きな気孔が増加していることが分かる。特に7日目から14日目にかけては、顕著に細孔の粗大化が進む。

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