放射光マイクロビームX線による高効率LED発光層の評価 No.024

Japanese | English

放射光マイクロビームX線による高効率LED発光層の評価 No.024

放射光マイクロビームX線による高効率LED発光層の評価
Web限定公開 

~より高効率で省エネルギーのLED普及を目指して~

成果のポイント

  • 放射光マイクロビーム蛍光X線分析により、LEDの窒化インジウムガリウム(InGaN)発光層のわずかな組成変化を可視化することに成功。
  • インジウム(In)の蛍光X線強度分布がLEDの発光波長分布と非常に良く相関することを確認。
  • 発光層の組成揺らぎがLED特性に与える影響を調べ、ナノとマイクロの両スケールにおいて組成揺らぎの適切な制御が必要である事を示した。

研究・開発機関:日亜化学工業(株)

SPring-8の活用

背景
III族窒化物半導体の窒化インジウムガリウム(InGaN)は、LEDやLD、太陽電池のような可視光デバイスにおけるキーマテリアルです。LEDではInGaNを発光層として用い、この層で電子と正孔が再結合する事により発光が実現します。InGaNを用いた青色発光ダイオードが初めて商品化され時は、結晶中には多数の貫通転位(注1)が存在するにもかかわらず発光効率が高い事実があり、この事は長い間謎でした。その後の広範な研究により、InGaN発光層を作成する際にInNとGaNの大きな格子定数差に起因する非混和性がナノスコピック(注2)な電位変動を生じ、そこにおけるキャリアの局在化が高い発光効率の重要なメカニズムであるということが提案されてきました。しかしながら実際のLEDデバイスのInGaN発光層においては、ナノスコピックな電位変動のみではなくマイクロスコピックな変動も存在し、 双方が発光特性に影響すると考えられ、それらの状態を把握する事が重要です。これら電位変動の評価として、時間分解フォトルミネッセンス(TRPL)分光法、走査型近接場光学顕微鏡(SNOM)、およびカソードルミネッセンス(CL)分光法などのナノ・マイクロスケールの光学的手法や、透過型電子顕微鏡(TEM)、アトムプローブトモグラフィー(APT)などのナノスケール構造解析手法が利用されてきました。一方で、InGaN発光層はGaN中に埋め込まれた位置に存在しており、直接視覚的に観察するためには破壊測定になってしまう問題や、これらの装置の特性上、Inの平面内2次元分布をマイクロスケールの広範囲にわたって評価することも困難でした。

成果の詳細
そこで、SPring-8のサンビームBL16XU(注3)における放射光を用いたマイクロビーム蛍光X線マッピングにより、LEDのInGaN発光層について、サブミクロンレベルにおけるIn強度分布を調査しました。実験ではInの弱い信号を取得するにあたり、空気中にたった1%以下しか存在しないArが邪魔をするため、対策としてHeパージ可能なサンプルチャンバを作成しArの影響を排除した測定を実施しました。その結果、LEDのInGaN発光層におけるIn組成分布のわずかな変化について、蛍光X線マッピング技術を用いて、広視野2次元で、かつ非破壊で可視化することに成功しました。さらに、InGaN発光層におけるInの蛍光X線強度分布(組成分布)と光学特性(波長分布)との相関の一致が得られました。今までInGaN発光層における、ナノスケールのIn揺らぎがLED特性に与える好影響については、数多に研究されてきましたが、本研究ではマイクロスケールのIn揺らぎが必ずしもデバイス性能にプラスの影響を与えるわけではない事を実証し、更に高効率で省エネルギーのLED性能を実現するためにはナノとマイクロの両スケールにおいてIn組成揺らぎの適切な制御が必要である事を示すことが出来ました。これらのことから今後さらにより高効率で省エネルギーのLEDの製造が期待されます。

白色LEDの発光効率向上

白色LEDの発光効率向上
図1 白色LEDの発光効率向上
青色LEDにYAG系蛍光体を用いた白色LEDは1996年の発明以降指数関数的な速さで改良がなされ用途が広がっています。

測定系と試料の模式図

測定系と試料の模式図
図2 測定系と試料の模式図

白色LEDチップ同一箇所の (a) PLによる発光波長マップ (b) In-L線XRF強度分布マップ

白色LEDチップ同一箇所の (a) PLによる発光波長マップ (b) In-L線XRF強度分布マップ

図3 白色LEDチップ同一箇所の (a) PLによる発光波長マップ (b) In-L線XRF強度分布マップ
大面積において相関的な一致が確認されました。 


【用語解説】
注1貫通転位:転位とは結晶内に存在する欠陥であり、これが上部発光層まで貫通して発光特性に影響を与えると言われています。
注2ナノスコピック:微視的解析
注3サンビーム:企業グループ13社による“産業用専用ビームライン建設利用共同体(サンビーム共同体)”が運営するSPring-8の専用ビームライン。BL16XU(挿入光源(ID)ビームライン)とBL16B2(偏向電磁石(BM)ビームライン)の2本のビームラインがあります。

PAGE TOP