鋼材溶接で生じる凝固割れの抑制ー溶接過程の組織変化を世界で初めてその場観察

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鋼材溶接で生じる凝固割れの抑制ー溶接過程の組織変化を世界で初めてその場観察

鋼材溶接で生じる凝固割れの抑制

溶接過程の組織変化を世界で初めてその場観察

成果のポイント

  • 高合金鋼*の溶接時の溶融・凝固過程の組織変化を詳細に測定し、合金の凝固割れ**抑制に筋道

研究・開発機関:住友金属工業(株)、大阪大学、(公財)高輝度光科学研究センター

*高合金鋼 鋼に添加する合金元素の割合が10%以上のもの。

**溶接凝固割れ 溶接は、金属の急速な溶融・凝固過程です。その途中で低融点の膜(液相)が形成され、凝固が終わっていない状態で収縮時の応力が作用し、亀裂が生じる現象を「溶接凝固割れ」といいます。

SPring-8の活用

背景
溶接凝固割れを防ぐことは溶接部の信頼性向上にとって不可欠です。この目的で、溶接部の合金から凝固温度の低下をもたらす金属を減らすなどの方策が考えられてきましたが、実用化には難点がありました。
 凝固割れを防止するには、溶接の過程を詳しく観察し、いつ、どのような物質が生成するのかといった凝固割れ発生のメカニズムを解明し、凝固割れを予測する必要がありました。

成果の詳細
溶接部位の組織の変化をその場で観察するため、溶接機を持ち込み、微弱な信号を検出できる二次元ピクセル検出器PILATUS*を適用しました。その結果、急冷過程における物質の組織変化をとらえることに成功し、凝固割れを改善する材料設計の指針がつくられました。
 例えば、合金中のニオブと炭素の量を増加させると、ニオブが早くから炭素と化合物をつくります。凝固割れを防ぐには、タイミングよくニオブ炭化物が安定して成長することが重要であることを実際に明らかにしました。

*PILATUS : (公財)高輝度光科学研究センターとスイスのポールシェラー研究所(PSI)が共同開発した高感度の高速二次元X線検出器


溶接過程の観察のために開発された装置

溶接している特定の個所の溶融・凝固現象を、0.01秒間隔という高時間分解能でその場観察することができます。

溶接過程の観察のために開発された装置


高合金鋼のX線回折パターン

数秒間の急冷過程でニオブ炭化物(NbC)が液相から出現し、安定して成長します。その結果、ミクロ組織が安定になるので、凝固割れが抑制されます。
①いったん溶解して温度が下がり、凝固が始まった瞬間。液相(Halo pattern)からδ相がまず出現します。
②さらに温度が低下すると、γ相が現れます。
③さらに温度が下がると、NbCが出現(晶出)して液相が消滅します。このときγ相のス ポットとNbCのスポットが一列に並び、組 織的に安定した方位関係が成立します。
④最終的に、γ+σ+NbCの3相になることがわかります。

高合金鋼のX線回折パターン