軽量気泡コンクリートの材料設計法の開発 JIO-008

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軽量気泡コンクリートの材料設計法の開発 JIO-008

軽量気泡コンクリートの材料設計法の開発

結晶成分トバモライトの生成メカニズムを解析

成果のポイント

  • 軽量気泡コンクリート(ALC)*の生成反応の流れをその場で観察し、結晶成分トバモライト**の生成メカニズムを解明
  • ALCの材料設計と生成反応の制御に道

研究・開発機関:旭化成(株)/旭化成建材(株)

*軽量気泡コンクリート(ALCはAutoclaved Lightweight aerated Concreteの略) ケイ石、セメント、生石灰などの主原料に、水と発泡剤(アルミニウム)を入れると、 スポンジケーキのように発泡・硬化し、多孔質のコンクリートが生成されます。 重さは従来のコンクリートの5分の1、断熱性・耐火性などに優れています。 日本では、1960年代から建築材料として普及しはじめ、今では非常に多くの建物に、壁材、床材、間仕切材などとして幅広く使われています。

**トバモライト ALCの骨格をつくる結晶性のケイ酸カルシウム水和物。 強度と、熱や水で化学変化をおこさないという耐久性に優れています。 鉱物として1880年にTobermory(スコットランド)で発見され、その地名に因んで名付けられました。 その後、高温水蒸気を供給して生成するコンクリート中に存在する結晶が、天然鉱物のトバモライトと同一であることが明らかにされました。

SPring-8の活用

背景
 ALC の強度と耐久性を決めているのは、トバモライト結晶の質と量です。板状の規則正しい結晶が大きく成長するには、原料に温度と水がいきわたり、結晶が成長する空間となる気泡がたくさんできる条件が必要です。そのため、建築材料としてのALCは高温・高圧の水蒸気釜(オートクレーブ)で製造されます。
 近年、ALC の性能をより高めたいというニーズが出てきました。ところが、オートクレーブ中の化学反応は見えないので、原料の配合比や製造条件を変えて、試行錯誤で生成物を評価するしかありませんでした。

成果の詳細
 SPring-8 のビームラインにオートクレーブセルを持ち込み、高強度X 線を照射して回折角を測り、どのような物質ができているかを調べました。
 その結果、トバモライトの生成メカニズムがわかってきました。トバモライトはこれまで、ケイ石と生石灰が反応してできるケイ酸カルシウム水和物(CSH)を経て生成されると考えられていました。それだけでなく、硫酸塩化合物のモノサルフェートから水酸エレスタド石(HE)を経たルートの存在が明確になったのです。 加えて、トバモライトへの変化のタイミングも明らかにされました。
 今後は、これらの結果を指針にして、ALC の材料設計を進めることが可能になりました。


ALCの構造

ALCの内部には気泡が分散していて、気泡間は細孔でつながっています。気泡と細孔の量は全体の80%、ダウンジャケットのように空気をたっぷり含んでいるので、断熱性が高いのです。気泡と細孔の表面で、トバモライト結晶が成長します。

ALCの構造

ALC内部の気泡

トバモライト結晶

トバモライト結晶


SPring-8 でのX 線回折実験

二次元ピクセル検出器 PILATUS
オートクレーブセルで生成された物質で回折されたX線を高時間分解能で測定します。
PILATUSは、高輝度光科学研究センターとスイスのポールシェラー研究所(PSI)が共同開発した高感度の二次元X線検出器。

SPring-8 でのX 線回折実験


ALC 生成反応におけるX線回折パターン

ALC 生成反応におけるX線回折パターン

照射されたX 線は生成物に当たって回折されます。回折角はそれぞれの物質に固有のものなので、その物質を同定することができます。回折パターンを見ると、トバモライトがいつ生成されるのかがわかります。

ALC 生成反応における鉱物相の変化

ALC 生成反応における鉱物相の変化

ケイ石と消石灰が少なくなるのに伴ってトバモライトが生成されているのがわかります。これは従来から知られていた生成ルート(CSH)を裏付ける結果でした。また、新たにモノサルフェートという中間生成物の存在が明らかになりました。モノサルフェートは途中で消滅し、水酸エレスタド石(HE)を経てトバモライトが生成するルートが存在していたのです。