むし歯予防ガムの開発-初期むし歯の回復を結晶レベルで解明

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むし歯予防ガムの開発-初期むし歯の回復を結晶レベルで解明

むし歯予防ガムの開発

初期むし歯の回復を結晶レベルで解明

成果のポイント

  • 初期むし歯*(初期う蝕)におこる脱灰・再石灰化の結晶変化を初めて観察
  • 初期のむし歯にリン酸化オリゴ糖カルシウム**を補うと、失われた結晶が再生することが判明
  • リン酸化オリゴ糖カルシウムを配合したむし歯予防ガムを開発し、商品化

研究・開発機関:江崎グリコ(株)

※ このむし歯予防ガムは、消費者庁より「特定保健用食品」として認可されています(平成22年9月30日付)。

*初期むし歯 口の中の細菌が、食べ物に含まれる糖質から酸を作り、リンとカルシウムからなる歯の結晶を溶かします(脱灰)。 この脱灰により初期むし歯が生じます。 脱灰で失われたミネラル成分が再生することを「再石灰化」といいます。 この再石灰化によ り初期むし歯は健全歯へと回復に向かいます。

**リン酸化オリゴ糖カルシウム じゃがいもから作られる食品素材。 水溶性が高く、唾液によく溶けます。むし歯菌により、むし 歯の原因となる酸を産生することはありません。

SPring-8の活用

背景
 従来の燃料電池は、燃料の水素と酸素を反応させることで水と電気エネルギーを発生させています。この発電では、水素イオンを移動させる電解質膜が強酸性なので、電極触媒には高い耐蝕性が求められます。そのため触媒材料として初期むし歯が進行すると、歯の表面が破壊され、う窩(か) (う蝕によってできた穴)ができます。こうなると歯を削る治療が必要となるため、歯みがきなどによって、むし歯の原因物質である歯垢を除く予防法が勧められてきました。
 近年は、脱灰で溶けたミネラル成分を再生する(再石灰化)ための研究が行われています。新しく開発されたリン酸化オリゴ糖カルシウムには、歯の再石灰化効果があることがわかりました。 しかし、従来の実験方法では、ミネラル量、硬度といった量的な変化は評価できますが、歯の丈夫さを決める結晶性の詳細な変化は測定できませんでした。

成果の詳細
初期むし歯は0.1 mm レベルの領域で結晶が失われます。そのため歯の結晶の変化を調べるには、マイクロメートル(μm )のレベルで観察する必要があります。それが可能なのはSPring-8のX線マイクロビームしかありません。実験では、ウシの歯のエナメル質を切り出して初期むし歯を発症させ、リン酸化オリゴ糖カルシウム配合ガムを噛んでヒトの口腔内で一定期間再石灰化をさせました。そして、健全、脱灰、再石灰化の3つの領域を解析しました。
 その結果、脱灰部はミネラルが原子単位ではなく結晶単位で失われていること、再石灰化部ではミネラル量の増加とともに結晶量も増えていること、しかも、健全な歯と同じ結晶の並び(配向性)になっていることが明らかになりました。


歯の構造と初期むし歯

歯の構造と初期むし歯

初期むし歯ではエナメル質の内側からミネラルが溶けだします(脱灰)。 健康な歯と比べると、白濁して見えます。 この段階では、唾液の中のリン酸イオンとカルシウムイオンが歯に補給されると、再石灰化が起こります。

初期むし歯対策ガム


リン酸化オリゴ糖カルシウムによる再結晶化の実証

リン酸化オリゴ糖カルシウムによる再結晶化の実証ミネラル成分量の変化従来の方法( X線透過法)による測定脱灰部位(赤)ではミネラル量が低下していますが、再石灰化部位(青)では回復しています。

結晶性の変化SPring-8のマイクロビームで測定

結晶性の変化SPring-8のマイクロビームで測定

健全な部位(黄)に比べて、脱灰部位(赤)の結晶性は低下しています。 再石灰化した部位(青)では結晶性が回復していることがわかります。


予想されるリン酸化オリゴ糖カルシウムによる歯の再生メカニズム

歯のエナメル質は、直径約20ナノメートル(nm)、長さ約100 nmの六角柱の微結晶(ハイドロキシアパタイト)が並んだ状態にあることで強度が保たれています。 初期むし歯では、ハイドロキシアパタイトが結晶単位で失われ、空隙が生じていることがわかりました。さらに、リン酸化オリゴ糖カルシウム配合ガムを噛んで再石灰化が促されると、ハイドロキシアパタイト単位で空隙が埋められていることがわかりました。

歯の結晶の変化

歯の再生メカニズム